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COLUMN
2017.09.28

バック・トゥ・ザ・カルチャー05 2007年の『コーヒープリンス1号店』[writer]西森 路代

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韓国映画どえらいと思わせた『新感染』『アシュラ』……

今年は韓国映画が熱いと言われています。春には『アシュラ』、『哭声/コクソン』、そして『お嬢さん』という、三種三様の強烈な作品が日本で上映され、それだけで度肝を抜かせていたというのに、程なくして今度は、ゾンビホラーものの『新感染 ファイナル・エクスプレス』まで公開で「韓国映画どうなってるの?」という声もよく耳にします。

 

その『新感染』に、主人公として出演しているのが、コン・ユさんです。思えば、コン・ユさんには、我々、韓流で仕事をしている人は救われました。と言っても、2004年頃にスタートした韓流ブームは、テレビなどのマスメディアを通してみると、ヨン様がけん引していたように映っていたかもしれません。実際の韓流ブームは、ヨン様は一つの人気の核ではありましたが、その後、実はファンの年齢層を少し引き下げ、2006年~2007年は、『アシュラ』に後輩刑事として出演していたチュ・ジフンさんと、『新感染』のコン・ユさんの二人に引っ張られていたのです。

 

『アシュラ』の後輩刑事はラブコメの王子様出身

 

チュ・ジフンさんの出演した『宮~Love in Palace』は、2006年に韓国で放送スタートしたドラマで、もし韓国に王室が存在していたら?という斬新なシチュエーションのラブ・コメディでした。このドラマでジフンさんは、ちょっと素直になれない王室の皇位継承第一位の王子を演じました。イケメンの王子が芸術高校に通っていて、普通の家の女の子のヒロインとなぜか祖父の代の取り決めで結婚させられることになり……という物語でした。

 

このドラマとジフンさんがどれだけ人気だったかというと、2006年の雑誌の表紙は、そのほとんどがジフンさんか『宮』関連の写真であったと言っても過言ではありません。特集ページも10ページを超えるから、毎号毎号、ドラマの細かい部分からジフンさんのいいシーンを抜き出しては書き、抜き出しては書き…という一年を過ごしていました。あの年の収入の半分はジフンさん関連の記事の原稿料であったのではないかというほどです。

 

ファンミーティングをすれば、5000人クラスのホールが満員で、人気がありすぎて、韓流ムックでは個別インタビューの時間もとれないほどでした。チュ・ジフンさんのまるごと一冊の写真集が出ると、「どうやったらチュ・ジフンのスケジュールをおさえられるんだ!」と編集者たちはうらやんでいました。思えば、この頃が実は韓流のピークだったし、私自身も本当に忙しかった…。

 

ジフンさんで覚えているのは、それまでの韓流スターと違って、カフェに行って本を読むのが好き…とかそういう文化的な匂いをさせていたところ。韓国では、感性が豊かなことを、「感性的」ということがありますが、まさに「感性的」な俳優さんなのかなと感じていました。それから、映画『チュ・ジフン in アンティーク~西洋骨董洋菓子店~』と『キッチン~3人のレシピ~』での来日時に、たくさんフラッシュを浴びて、やたらとまぶしがっていたことを記憶しています。その後は人気絶頂でいろいろあって、あっという間に兵役に行ってしまいました……。

 

コン・ユは三池作品でスナイパーを演じていた!

 

それと前後して、大ヒットしたコンテンツがありました。『コーヒープリンス1号店』という作品です。こちらに出演していたのがコン・ユさんでした。このドラマは、韓国でカフェが流行り始めたきっかけとも言われていたような。コン・ユさんはカフェオーナー役で、ヒロインの女の子は(そういえばさっきのドラマと同じ女優さんでした)、男しか働けないというカフェで雇ってもらうために、男装してもぐりこむというお話。

 

女の子が男装して働いているのを気づかず、好きになってしまい、最終的には、男でも女でも好きになったんだから関係ないんだ!と告白してラブラブになっていたような。

 

コン・ユさんは、『コーヒープリンス』以前にも、いろんな作品に出ていて、私がそんな中でもやたらと印象に残っているのは、日本の『龍が如く』になぜかスナイパーとして出ていたことでした。そのときのコン・ユさんは短髪で、けっこういかつい感じの印象で、この人は兵役後もこの路線もいけそうだし、年齢重ねるほうがむしろいいんじゃないかと思っていました(今になってとってつけてるわけではないですよ!)。

 

兵役後も人気は衰えず、除隊後の2010年にパシフィコ横浜で行われたファンミーティングでのコン・ユさんは、兵役のときのことを聞かれ、「イノシシを追いかけるのがうまかった」と言っていたのだけが、強烈に印象に残っています。ていうか、兵役でイノシシおいかけるんだ……と。ジフンさんが「感性的」ならば、コン・ユさんは、もうちょいナチュラルに骨太な印象を抱いていたような気がします。中身というよりは、見た感じとか、俳優さんとしてどういう役が似合うかというときの話としてです。

 

ジフニはかき乱し、コン・ユは背負う。

 

2006年、2007年当時は、ドラマから出てきた女性に人気の若手スターだったジフンさんとコン・ユさんですが、冒頭でも取り上げた、今年、日本で話題となった『アシュラ』と『新感染』にそれぞれ出演しています。これが、個人的にとても感慨深い。というのも、俳優って自分のイメージをその年齢ごとに変化させながら成長していかないといけないもの。二人は、自然と、その年代で自分に似合う役を演じられる俳優に着々と成長していると感じるからでしょうか。

 

ジフンさんは、『アシュラ』の中では、先輩刑事に憧れ、あんな男になりたいと思っているからこそ、道を踏み外してしまい、みんなの歯車を狂わせてしまうような役。未熟だけれど、単に未熟なだけではできない、危ういバランスを持った役で、私は、30代を迎える男性俳優(日本の俳優さんでも)には、ぜひともこの一瞬にしかできない役として、こういう役をやらせてあげてよ!!!と強く訴えたいと思っているほどです。ベテランでも若手でもなく、なかなかどういう方向性に進めばいいのか難しい年代の俳優にも、こんな強烈な役回りがあったのかと思いました。ジフンさんはその後も、良い映画のキャスティングに名前の挙がる俳優の一人になっているように思います。

 

一方のコン・ユさんは、『新感染』と前後して、2016年にひさびさに出演したドラマ『鬼<トッケビ>』も韓国のケーブルテレビ局tvNの歴代ドラマ史上最高の視聴率を記録して、中国でも大人気になったというニュースは聞こえてきていました。

 

それだけでなく、2011年の映画『トガニ 幼き瞳の告発』は、実際にあった福祉施設での児童暴行事件をもとに作られた社会派の作品でも主演。映画の上映がきっかけで、法律まで変えたほどの作品でした。この映画の何が凄いって、こんだけ凄惨な出来事を、隠すのではなく、ちゃんと告発して世に知らしめて、世の中を変えられるところ。しかも、コン・ユさんは、『トガニ』を自らが原作を読んで映画化したいと申し出たそうです。

 

こうやって二人の俳優の記憶を振り返ってみると、年齢的にもまだジフンさんが35歳で、コン・ユさんが38歳という年齢差もあるのでしょうが、ジフンさんはいい意味で場をかき乱す役が似合うタイプで、コン・ユさんはとにかく背負う感じというイメージがあります。二人とも、ラブ・コメディの主人公として2000年代にときめかせてくれていた(そして韓流業界を盛り上げていた)人であり、今ではそれぞれにそのときとは違う顔を見せている。韓国映画には、40代にもイ・ジョンジェ、ファン・ジョンミン、チョン・ウソンなどいい俳優がいっぱいいますが、この二人もきっとこれからの韓国映画界を背負う存在にますますなっていくのであよう(これ書いてて、ハ・ジョンウがコン・ユと一歳違いでまだ39歳なのにちょっと驚きました)。

西森 路代

西森 路代

フリーライター。TBSラジオ文化系トークラジオLife出演。WEBRONZA、TVBros.などで執筆。連載は日経WOMAN ONLINE、月刊サイゾー、messyなど。本は「女子会2.0」「K-POPがアジアを制覇する」

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