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COLUMN
2017.11.07

バック・トゥ・ザ・カルチャー06 1998年のVシネマ[writer]西森 路代

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名古屋の映画館の副支配人を追った『シネマ狂想曲』を見た

最近、仕事で名古屋の放送局・メ〜テレが制作したドキュメンタリー番組「シネマ狂想曲〜名古屋映画館革命〜」という番組を見ました。この番組は、現在UPLINKでも上映されていますが、私はテレビでの放送版を見ました。最近、東海テレビをはじめとして、ドキュメンタリーと言えば、名古屋の放送局っていうイメージついてきましたね。

 

 

このドキュメンタリーは、名古屋の映画館・シネマスコーレの副支配人の坪井篤史さんを追ったもの。シネマスコーレのことは、松山にいたときから、なんとなくその存在は知っていましたが、今も支配人を務める木全純治さんが自ら中国に出向き、配給もしていたそうで、中国、香港、韓国の映画といえば、シネマスコーレと言われていた時代もあったということをこの番組を見て知りました。

 

 

そういえば、私が1997年の境に香港映画にどっぷりはまったころ、香港に行く仲間に名古屋の人が多かったのですが、それもシネマスコーレがあったからなんだろうなと思いました。松山にも香港が好きな人はいっぱいいましたが、それはシネマルナティックのおかげだとも思っています。

 

 

さて、この番組は、とにかく現在の副支配人の坪井さんが熱いというか過剰なのが見どころです。とにかく、頭の中に思いついたことをしゃべるしゃべる。そして映画にとにかく没入している。そんな姿は、日本の名だたる映画監督を引き寄せ、また映画には興味ないけれど、坪井さんを見に映画館を訪れる人もたくさんいるそうです。また、目を引いたのは、坪井さんと映画好きの友達とで、とにかくVHSを集めているところ。VHSを保管する部屋もあるほどです。

VHSを買い戻せ!

実は、私も最近VHSを買い戻しています。というのも、最近『欲望の街 古惑仔』を見ようと思ったらamazonで高騰していたことがきっかけでした。実は後になってTSUTAYAのレンタルにはあったことを知ったのですが、それもVHSのみでした。ほかにも、2000年前後に、『レザボア・ドッグス』に影響されて作られたであろう、Vシネマを見返したいなどと思い始めたら、もうVHSを買うしか手段がないことに気づき、少しずつ購入をしているところです。

 

 

坪井さんが何歳なのかはわかりませんが、この番組を見ていると、自分たち世代って、こういう感じあったなーと懐かしく思えて仕方ありません。それはどういうことかというと、タランティーノが90年代に出てきて(ワインスタインの話題があったところで彼の話をするのもちょっと気が引けますが、そことは今回は関係なく)、彼がビデオ屋で働いていて、映画狂いであったところから、あれだけの作品を作る存在になったことに、田舎の文化系の男女…というかボンクラと言われる人たち、もっと言えば、変わり者と思われがちな趣味人はどれだけ希望を持てたかと。坪井さんは、タランティーノに重なる部分もあったし、そういうタランティーノに影響を少なからずも(間接的にも)受けたのかと思ったし、そして坪井さん自身を存在も、今となっては、同様な人々、人とどっか違うとか、過剰なところがあると思っている人を勇気づけるのではないかと、そんな風に見たわけです。

 

 

私もそんな中の一人だと思います。1990年代半ばは、なんだかわからないけれど、タランティーノは見ておかないといけないらしいぞ、という空気が漂っていました。私が彼の映画を見たのは、1994年の頃。家でWOWOWかなんかで放送されていた『パルプ・フィクション』を父親と一緒に見たのを覚えています。家のテレビで見るという環境ながら、見たあとに、いてもたってもいられなくなって、ひとり車を運転して、当時まだラフォーレ原宿松山にあったタワレコにサントラを買いにいったところまで覚えています。

 

 

その頃はまだ映画好きでも文化系と言えるほどでもなかった私でしたが、その後は香港映画にハマったこともあり、タランティーノの存在は、大きくなっていったし、なんのとりえもない自分だけれど、映画だけはいっぱい見てるということは、ちょっとした生きる勇気にもなっていた気がするし、そんな人が周りにもいっぱいいました。

 

 

あの頃、タランティーノがいたからこそ日本の古いヤクザ映画や、香港映画の魅力に気づくことができたと言っても過言ではないでしょう。噂では、アンディ・ラウの当時で100本を超える主演映画もタランティーノは全部見ているという話なんかもありました。そして、ギャングが出てきて、強盗に入ったり、若いカップルが生き急いだりする作品が、日本のみならず香港にも当時はたくさんありました。

『友は風の彼方に』『レザボア・ドッグス』そして『報復』

彼の『レザボア・ドッグス』を見たのはもうちょっと後のことでした。そして、この映画の元になったのが、チョウ・ユンファとダニー・リー主演、リンゴ・ラム監督の『共は風の彼方に』であると知りました。香港映画にはまった人の多くは、2000年代、Vシネマの魅力に取りつかれるというコースがあったのですが、そんな中で見た、竹内力が主演、宮坂武志監督の『報復』という作品は、レザボアオマージュものの中でも、もっとも私が感動にむせび泣いた作品です。今見たらどうなのかわかりませんが。

 

 

本当はVシネマというのは東映のレーベルなのですが、オリジナルビデオの総称として、ここでは使わさせていただきます。当時は、Vシネマの世界で黒沢清や三池崇史がキレッキレの作品を作っていました。最近『HiGH&LOW THE MOVIE』で、極悪非道なほうの役で、岸谷五朗や加藤雅也や岩城滉一が出ているのを見ると、当時の三池作品を思い出して懐かしい気持ちになってしまうのでした。ちなみに、岸谷五朗なら『新・仁義の墓場』、加藤雅也ならば『許されざる者』、岩城滉一ならば『FAMILY』をお勧めしますが、これがまたVHSでないと見れそうにないんですけれど…。

西森 路代

西森 路代

フリーライター。TBSラジオ文化系トークラジオLife出演。WEBRONZA、TVBros.などで執筆。連載は日経WOMAN ONLINE、月刊サイゾー、messyなど。本は「女子会2.0」「K-POPがアジアを制覇する」

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