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COLUMN
2018.03.29

2018年の『素敵なダイナマイトスキャンダル』[writer]西森 路代

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松山から東京に出てきて10年ちょっと。その間にたまに行く飲みの場では、「かましてくる」人というのがいました。そういう人がいると、いろんな意味ですごいなと思い、嫌が応にも記憶にのこってしまう。でも、何年かたつと、そういう人に限って(いや、だからこそ?)なんらかの形で世にどどーんと出てきていたりするもので。こういうパターンを何度も見ました。

 

何度も見てしまうと、なんであろうと、「かましてくる」ことは多少は必要なのかと思ってしまうほど。もちろん、どどーんと出てきたその後が重要なので、なんとも言えないのですが、そんなことをずっと思っていたのでした。

 

『素敵なダイナマイトスキャンダル』という映画を見たら、なぜかこのそんな人たちのことを思いだいました。考えてみると、主人公で柄本佑演じる末井昭と、峯田和伸演じる近松さんという人の関係性を見たからだと思います。

 

共に看板の会社で働くふたりは気が合い、デザインについて喫茶店で語らう仲。近松はお金もないのに、つけで末井にご飯をおごるような「かました」ところがある人だったけれど、あるところでは妙に冷めたところがあるというか、諦観したようなところがある。末井がデザインについて熱く語ると、その熱さに距離を置く。そのうち、近松は看板会社を辞め、キャバレーのポスターを書く仕事に就く。そのデザインを見て、素直に感銘を受ける末井。彼もキャバレーの仕事に就くのでした。

 

しかしキャバレーはキャバレー、末井は夜な夜な、裸にペンキをかぶり、アスファルトにイラストレーションを描くようなことをして、自由に表現できないうっぷんを晴らしていました。そういえば、こんなシーン、私も昔見たことがある……。高校時代、二つ上の美術部の先輩が、運動会の前のパフォーマンスとして、やはりペンキをかぶり、鳥の子用紙(愛媛の方言だそうですが)に飛び込んでいました。その先輩を高校卒業後に、BSのテレビや雑誌で見かけることとなりました。彼も「かました」人だったんですね。

 

映画の中の末井と近松は互いに切磋琢磨して、これが後の末井昭と近松に……とはならないのがこの映画のエモいところ。次に末井が近松さんに会うときには、末井はエロ雑誌の編集長でノリノリで「かました」人に。近松さんはそんな末井のことを「すごい」とか「いいんじゃない」というだけで、意見することもなくなっていました。

 

自分にも近松さんのような、すごいものを持っているのに、何か一歩引いているような友人がいたかもしれない……最初はそう思ったのだけれど、よくよく考えると、近松さんは自分みたいな気もしてくる。でも、ときどき、はったりかましたり、すごい人はいるけれど、そんなことは気にしなかったり、そんな風にしながら、なんとか東京の生活を続けているような気もするのです。

   

 

 

末井を見ていると、彼もだんだん冷めた人にはなってくる。でも、諦観をしなくて済んだことのひとつには、この映画のタイトルにも出てくるように、彼の母親が男とダイナマイトで自殺をするという、誰にもない経験をしていたことも関係があると思えるようにこの映画には描かれていました。この経験を末井の周りの人たちはどうとるか。末井がどうとるか。その捉え方でも、人の人生って変わってくるんだなと。

この映画の監督の冨永昌敬さんは、愛媛出身で、末井さんのように生まれたところから上京した人でもあり、また、佐田岬を舞台とした動画コンテストの審査員をすることにもなりましたので、そちらもどうぞ。

https://www.sadamisaki-wv.com/

 

『素敵なダイナマイトスキャンダル』

出演:柄本 佑 前田敦子 三浦透子 峯田和伸 松重 豊 村上 淳 尾野真千子
中島 歩 落合モトキ 木嶋のりこ 瑞乃サリー 政岡泰志 菊地成孔 島本 慶 若葉竜也 嶋田久作

監督・脚本:冨永昌敬

原作:末井 昭「素敵なダイナマイトスキャンダル」(ちくま文庫刊)

音楽:菊地成孔 小田朋美 

主題歌:尾野真千子と末井昭「山の音」(TABOO/Sony Music Artists Inc.) 

配給・宣伝:東京テアトル
  
2018年/日本/138分/5.1ch/ビスタ/カラー/デジタル/R15+

C 2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

dynamitemovie.jp

 

3月17日(土) テアトル新宿、池袋シネマ・ロサほか全国公開!

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西森 路代

西森 路代

フリーライター。TBSラジオ文化系トークラジオLife出演。WEBRONZA、TVBros.などで執筆。連載は日経WOMAN ONLINE、月刊サイゾー、messyなど。本は「女子会2.0」「K-POPがアジアを制覇する」

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