えひめ 街の魅力に気づくサイトマチボンヌ

COLUMN
2018.05.30

ホホホな日々 vol.12[writer]豊島吾一

  • twitter

音楽について考える

今年で僕が所属しているWAIWAI STEEL BANDが結成10周年を迎える。7月1日にはバンドの本拠地である埼玉県・所沢航空記念公園での主催ライブもあり、ますます多くの縁が繋がっていきそうだ。

※ライブの詳細はこちらでご確認を!→https://waiwaisteelband.com/

 

そこで今回は僕が演奏している楽器「スティールパン」との出会いや、そこから現在までについて書いてみたいと思う。先日、今治ホホホ座が市内で行うアート関連活動に対する助成金の申請を行ったのだが、その手続きで「なんでそんなに音楽にこだわるのですか?」という質問があり、それに答えていく中で、色々な想いが整理されてきたので、これは一度書いておきたいと思ったのだ。

話は16年前にさかのぼる。

7月に行われるWAIWAI STEEL BANDの主催ライブ。チケット好評発売中です!

 

 スティールパンとの出会い

スティールパンはドラム缶から作られた楽器で、「20世紀以降最後にして最大のアコースティック楽器発明」と言われている。ドラム缶の底をすり鉢状に凹ませて、その中に音盤を作り、その音盤をゴムを巻いたスティックで叩いて音を出す。するとドラム缶という素材からは想像もできない可愛いくて美しくて、どこか怪しい音が鳴る。(詳しくは「スティールパン」で調べていただくとたくさんの情報が出てくるので、楽器が生まれた歴史などを知りたい方はぜひどうぞ。)

僕がこの楽器に出会ったのは2002年だった。当時は東京にいて、大学卒業後アルバイトをしながら食いつないでいた。ちょうど吉祥寺に出来たばかりの「にじ画廊」で働いていた妻から、展示会中のデザイナー有田昌史さんが首から面白い楽器をぶら下げて弾いていたと教えてもらった。どうやらスティールパンというらしい。

リトルテンポや細野晴臣さんのアルバムなどで音と名前は聴いた事があったけど実物は見た事が無い。有田さんからスティールパンを習える場所があると教えてもらい、そのレッスン会場である浅草のパーカッションセンターを訪ねると、ハンチングを被った若者が女性たちにスティールパンを教えていた。挨拶すると「やった〜。男が来てくれて嬉しいよ!」と喜んだことを今も覚えている。※当時レッスンに来るのはほとんど女性だったらしい。

こうしてスティールパン奏者、伊澤陽一に出会ったことで、僕の音楽人生は大きく動き始める。

スティールパン奏者・伊澤陽一

 

 東京から今治まで車でやってくる師匠

楽器と師匠に一度に出会ってから一気にスティールパンにハマっていったのかというとそうではなかった。浅草のパーカッションセンターで行われるスティールパンレッスンに何度か通ったが、土日が仕事の眼鏡店に就職してからは都合が合わず通えなくなった。眼鏡店を退職してから復帰するも、今度は伊澤くんの考えもあってレッスン自体が終了。その後、彼のライブを見に行ったり、一緒にお酒を飲んだりして友達としての付き合いが続いていたが、スティールパンを弾く機会はなかなか無かった。スティールパンは一台が20万円近くし、なかなか購入に踏み切れなかったのも要因の一つだ。そして、2006年、祖父の死をきっかけに実家である今治に帰ることなった。

実家に帰る前に、僕は思い切ってスティールパンを注文することにした。それは今治に帰っても何か面白いことをやっていきたい!という決意のようなものだった。

実家に帰って父親の仕事を手伝いながら、結婚し、届いたスティールパンを弾く機会も無く、楽器が埃を被り始めたころ、伊澤陽一はライブをするために今治にやって来た。愛媛にある一台のスティールパンとろくに練習もしていない弟子を訪ねて。そして、彼の音を今治のみんなに聴いてもらうために、僕は初めてのライブ主催を行った。つまり、現在までやってきたたくさんの音楽家のライブも、ハズミズムも、今治ホホホ座も、ここから始まったとも言える。

 

 楽器を通じてたくさんの仲間と出会う

最初にやって来てから、時間を見つけてはツアーを組んで今治を訪れる師匠と演奏するため、僕は本格的に練習し始めた。そこから凄いスピードで出会いの連鎖が起こり始める。

2008年、高知のよさこい祭りにスティールパン演奏部隊で参加し、初めて伊澤陽一作曲の曲を弾いた。炎天下のなか丸二日間、朝から晩まで灼熱のトラックの上で弾きまくった。この時出会った多くのメンバーとは10年たった今でも親交があり、何人かは同じバンドで演奏している。

さらに、しまなみ海道10周年音楽祭やつむぎの村の祭りなど、この町にスティールパン奏者が集まる機会はどんどん増え、見に来てくれたお客さんの中からは「一緒に弾きたい!」と言ってくれる人が出てきた。僕はそんな声に応えるべく貯金をはたいて楽器を買い足し、この音に集うみんなと弾き始めた。伊澤くんが僕にしてくれたのと同じように。

そこからは演奏するたびに人数がだんだんと増えていった。やがてドラムも加わって立派なバンドになり、現在では愛媛で唯一のスティールバンド「minamo」として活動している。

※動画は2009年つむぎの村の祭りでのワークショップの様子。この中に後にminamoのメンバーとなるみんなもいる。

 WAIWAI STEEL BAND誕生!

一方、よさこいに参加した2008年、伊澤くんは地元所沢で一緒にスティールパンを弾くメンバーを募集しはじめた。そして、連絡してきた一人の小学生と一緒に活動し始める。練習場所は狭山市のイタリアンレストラン「WaiWai Dining Bar」内の空きスペース。そう!「WAIWAI STEEL BAND」はこのレストランで生まれたのだ。

僕はこの話がたまらなく好きだ。いくらでも自分の好きなように演奏できる音楽家が、たった一人の子どもとバンドを結成するなんて普通考えられない。スティールパンを弾きたい!という誰の気持ちも裏切らない伊澤くんならではの話だ。

2014年以降、2枚のアルバムをリリースし、最近では大きなフェスティバルへの出演も増えてきたこのバンドが、たったひとりの小学生と始まったなんて最高だなと思う。(彼の現在の夢は、地元所沢の学校にスティールバンドを作ること。きっと実現すると思う。)

WAIWAI STEEL BANDには現在50名を超えるメンバーが所属している。北は秋田から南は福岡まで、全国にメンバーがいる。それぞれが自分の住む土地で、ある者は働きながら、あるものは学生をしながら、時間を作っては練習を重ね、自分たちの日常の中で音を積み重ねている。そして、ひとたび演奏の機会が訪れると、伊澤陽一の音楽をWAIWAI STEEL BANDとして演奏するために集まり、その日その場所だけのアンサンブルを作り出すのだ。

 信じているものでやっていく

冒頭に書いたが、先日助成金の申請において「なぜそんなに音楽にこだわるのか?」という質問を受けた。それには「音楽を信じているから」としか答えようが無い。

こうやって振り返ると、演奏やライブ主催やシンプルに好きな音楽を聴くことを通じて、音楽から本当に多くのものを貰って来たなと思う。

確かに音楽は好き嫌いがあるし、ある意味お客さんを選ぶという側面もあると思う。それでも、生まれた時も場所も環境も違う人たちが集まり、見ず知らずであってもそこで共通な何かを作り出そうとする時、それぞれの差異をまるごと包んでくれる音楽の力を僕はとても信頼している。

そして、自分が心から信じているもので、夢中になって動いてこそ、本当に人を惹き付ける街に繋げていけるのではないだろうか?と考えている。自分の本当に好きなことについて話すとき、大人でも子どもでもキラキラと目が輝き、溢れるように言葉が出て、聞き手にとってあまり馴染みがなかった分野にさえ深い興味を持たせることがある。僕にとってはそれが音楽で、誰かにとっては別の何か。それでいいと思う。自分の好きなものを軸にして、そのために労をいとわず活動する人たちがいて、そんな人たちがいつか自分の繋いで来た縁を持ち寄って、ジャンルを超えて一緒に行動できれば、とても面白くて強い街が育っていくと思う。根っこにあるべきは手法よりも、情熱だ。

 

 ホホホなイベント情報

『中山うり「カルデラ」リリースライブ』

2017年にデビュー10周年を迎えた中山うりさんが、通算10枚目のフル・アルバム「カルデラ」を引っ提げて、今治ホホホ座にやってきます!

日時:2018年 6月10日(日)
   開場18:00 開演19:00
会場:今治ホホホ座(今治市共栄町1-3-3)
料金:予約3000円/当日3500円(共に1ドリンク別)
ご予約:i.hohoho.za@gmail.com ☎︎ 090-8479-0140
メン

バー:福澤和也(g)、南勇介(b)、宮川剛(dr)

 

《幻想とリディムの旅 芸予編》

今年キャリア28年を迎えるレゲエ・キーボーディスト「HAKASE-SUN」が今治ホホホ座に登場!
日時:2018年6月24日(日)
   開場:18:30 開演:19:30
出演:HAKASE-SUN O.A:minamo
   DJ:YAOYAO
会場:今治ホホホ座
料金:予約:2500円 当日3000円(ドリンク別)
予約:i.hohoho.za@gmail.com /090-8479-0140

keywords:
豊島吾一

豊島吾一

学校になじみにくい子供のための学校「今治高等学院」の学院長。音楽フェス「ハズミズム」の代表、「今治ホホホ座」共同代表。スティールパンバンド「minamo」のリーダーで今治の雑貨店「うお駒」の従業員。面白そうなことを全部やるべく、とっ散らかった日々を送る。

HP
facebook https://www.facebook.com/imabarihohoho/
instagram https://www.instagram.com/explore/tags/今治ホホホ座/