肉食系女子の次は、解体系女子! 捌く
加工場へと戻り、次は解体を見学。
施設では肉の品質管理が徹底しており、床、壁にいたるまで解体場のイメージは全くないほど清潔! シカが吊るされると、そこからの作業はほんとうに速かった。迷いのない切れ目がシカの体を「肉」にしていく。突然内臓を取り出すのを体験することとなったモデルのひかりちゃん。「はい!」といい返事ののち、迷いなくずぶぶと手を入れ肝臓、小腸、大腸の塊を出す。
「あったかい…!」としっかり感想もくれた。つ、強い。隣の部屋の加工場では、解体した肉をさらに部位ごとに切り分ける作業が行われていた。細かなポイントを見ながら、傷みがないか厳しくチェック。少しでも気になればベット用や飼料用になる。
「僕、そもそもジビエが嫌いいなんですよ」と、あっけらかんと森の息吹施設長・森下さんは言う。
「だからこそ、そんな人も食べて美味しいと思えるものをださないと」。確かに、害獣の有効活用の意味だけであればその行為自体が目的になるし、味も「ジビエだからしょうがない」となる。ここではあえて食材として、最高のものを作ることがルールだ。
そのためにジビエを求め連絡をとってくれたシェフに逆に頼みこみ、肉質のフィードバックをもらった。一流のシェフが「どこに出しても売れる」というレベルまで品質をあげるため試行錯誤し、過労により作業場で倒れたころ、ようやくOKがでたという。
産業としてジビエを続け産業としてジビエを続けるためには、質の線引きをどこまで高く保てるかがすべてだ。
もう、加工中の肉を見ていたら、おなかがすいてしょうがなかった。そりゃ食べたい。訪れたのは滑床渓谷にあるレストラン。
こちらでは森の息吹の鹿肉をハンバーグのほか、パスタソースなどで提供する。
「ジビエといえばいい状態のものが入るまで“待つ”けれど、最適な状態の鹿肉が常に提供してもらえるのはすごい」とオーナー。
絶品のジビエ料理をいただく
鹿肉のハンバーグは焼き目側と、肉汁あふれるフカフカの肉質が絶妙な食感で、噛むほどに旨みが溢れる。ジビエの獣くささはない。どこか野の香りがほのかに鼻の奥をかすめる。ああ、野生の肉を食べている、と思う。ちょうどレストランの先で、鳥獣保護区の看板のうしろを鹿の親子がこちらを見ていた。捕獲される鹿と保護される鹿。動物も作物も、どれも生きているのだ。スーパーにならぶトレーからは、生き物であったイメージはないけれど。あれ、でも、どうして考えなかったんだっけ。いただきます、ごちそうさま。 生きていく上でのこの言葉は、深い。
information
特定非営利活動法人『森の息吹』は令和3年度捕獲鳥獣利活用部門において農林水産大臣賞受賞。精肉にこだわった上質な鹿肉ジビエブランド「まつのジビエ」を展開中。
住所:北宇和郡松野町富岡719
電話: 0895-42-1756
滑床渓谷の自然の中に佇む客室を備えたロッジ。併設のレストランは地元食材を中心としたこだわりのイタリア郷土料理を提供する。森の息吹の鹿肉を上質なイタリア郷土料理として味わえる。
住所:北宇和郡松野町目黒 滑床渓谷
電話: 0895-43-0331
松野産の農産物や特産物が集う道の駅。季節ごとの地の恵みが並ぶほか、敷地内にはガラス工房やおさかな館、パン工房「&パン」なども併設。まつのジビエの鹿肉加工品もこちらで購入可能。
住所:北宇和郡松野町延野々1510−1
電話: 0895-20-5006