
お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません。
令和に昭和を呼ぶ男、ノリヲクンが満を持して帰ってきたゾ。
1983年代の松山を舞台に繰り広げるのは、ハラハラドキドキの恋物語。
街のあちらこちらで大切に受け継がれている、80年代テイストをぜひ味わってみて!
Contents
男はつらいよノリヲとアラレちゃん
「今年、東京●●●●●ランド(※1)が開園するらしいぜ」と得意げに話す情報通の先輩に、
何のことか分からず、頭がウニ(※2)になってしまった。
そのデズニーとやらが開業した後、巷にはおしん(※3)ブームが巻き起こる。
かくいうボクも毎朝、出勤前の15分、溢れる涙を抑えきれない。
あ、ボク、ノリヲです。
エム大学を卒業し、地元商社に入社した23歳。
ファッションにはちょいとうるさく、「BRUTUS」や「MEN’S CLUB』(※4)をバイブルに、
『ハイティーン・ブギ』のマッチ(※5)をお手本にして独自路線で悦楽男(※6)まっしぐらだ。
二度目の恋
そんなボクは、学生時代の哀しい恋愛(※7)を経て、ようやく2度目の恋に巡り合った。
お相手は、「どんるーかす」でアルバイトをしている、アラレちゃん帽子が似合う女の子。
恋も2度目なら(※8)、少しは上手にアプローチできるはず⋯と思いつつ、声をかけることもできない。
名前さえ知らないのに(※9)、彼女に恋をしたボクは独身寮で『キャッツ・アイ(※10)』を聴き、
「ミステリアス・ガール⋯」と呟いた。
偶然の再開
だが、奇跡は起こった。
「モア・ミュージック」で中古レコードを漁っていたボクは、
LPレコードの山の向こうに愛しの彼女を発見したのだ。
勇気を振り絞って、ボクは声をかけた。「ニャンニャン(※11)しませんか?」。
あっ、焦ってとんでも無いことを言ってしまったが、彼女は小首を傾げて「ニャンニャン?」。
慌てて「間違えました!ニャ、ニャマエ(名前)を教えてください」。
彼女はクスクス笑いながら、「すみれです」と言う。
ボクはすかさず、「ス、スバル座にフラッシュダンス(※12)を見に行かない?」と誘った。
デートの準備
数日後、ボクは完璧なデートプランを立てた。
街ブラ、映画、街ブラ、ご飯、街ブラ。
若干、街ブラ比率が高いが、これは綿密な計画。
歩き疲れた彼女を言葉巧みに独身寮へと誘い込み⋯。
いや、ニャンニャンとは言いません。なんとかA(※13)をという淡い期待を抱いていたのだ。
その夜、ボクは社長となって秘書のすみれちゃんと働く夢を見た。
デート当日と彼女の秘密
デート当日、予定を確実にこなして、
今、ボクとすみれちゃんは独身寮の屋上で沈む夕日を眺めている。
「甘平みたいなお日様ね」とすみれちゃん。
「三平(※14)?師匠なら3年前に亡くなったけれど、似てる?」とボクは問い返した。
すみれちゃんはそれには答えず、
「ねぇ、なんで私がいつもアラレちゃんの帽子かぶっているか知ってる?」と聞く。
訳が分からず首を横にふるボクに、
「これはね、私のデロリアン(※15)なの。私、レーワの女の子なんだ」。
彼女がそう言った瞬間、夕陽がギラリと輝きを増した。
思わず、瞬きをしたら、すみれちゃんがいない。
残されたのは、彼女がメロディアン(※16)と呼んだ帽子だけ。
「えっ、またこのパターン?」。
ボクの泣き声は瀬戸内海に響いた。
※1●1983年〇月にオープンした夢の〇。
※2●頭が混乱してしまう状態。
※3●1983年4月から翌3月まで放送され、空前の大ヒットを記録したたNHK連続テレビ小説第31作。
※4●1980年代に創刊した男性向けのライフスタイルマガジン。
※5●1982年に公開された近藤真彦(マッチ)主演の映画とその主題歌。
※6●『BRUTUS』の読者が理想とした男のスタイル。
※7●マチボンVOL.20参照。
※8●中森明菜の3rdシングル『セカンド・ラブ』より。
※9●マッチの5rdのシングル『情熱★熱風☽せれなーで』より。
※10●週刊少年『ジャンプ」に掲載された漫画、また杏里が歌ったアニメ版の主題歌。
※11●チョメチョメすると同義語。
※12●市内にかつてあった映画館と1983年にヒットした映画作品。
※13●ABCそれぞれに意味があります。
※14●初代林家三平。二代目林家三平(初代こぶ平)の父。
※15●『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズに登場するタイムマシン。
※16●コーヒーフレッシュのメーカー、またはコーヒーフレッシュのこと。
今回ご紹介した80年代の雰囲気が残るお店
松山には、昭和の香りを色濃く残した
1980年代の雰囲気を楽しめるお店が今も点在しています。
今回ノリヲが巡った、昭和レトロを感じられるお店を厳選してご紹介。
いざ、タイムスリップしたようなノスタルジック空間へ!
ふるぎやきっかけや 肉
古着屋きっかけ屋肉という一風変わった店名は、
古着を通じて、何かしらのきっかけを作れたら。
ということから。(肉は、大事だからとかなんとか…忘れた。)
80年代から2000年代にかけての日本の古着を中心に、
独自のセレクトがタイムレスでエクスクルーシブでプライスレス!
いわゆるマストバイヴィンテージは全くないが、
とにかくまあ、他の人とは被らない面白いものが見つかる。
時々、店内でトークショーやってみたり、オーナーの矢野君はDJもやってるよ。
松山市千舟町3丁目1-6 藤村ビル2F
休:木曜
営:<月~金>13:00~20:00、<土日祝>12:00~20:00
駐車場:無
Instagram:https://www.instagram.com/furugiyakitukakeya_niku/
どん・るーかす
数年前に取材させていただいた際、
どんなお客さんにも懐かしいと思ってもらえるよう、
店内に飾ったオブジェひとつの位置さえ動かしていない…と仰っていたマスターに
感銘を受けた。古いものを否定し、ゼロから作ることは勢いだけで乗り切れてしまう。
でも、現状を長く維持するにはアイデンティティが必要だ。
こうした哲学と歴史ある店が今の若者たちを引き付けるのは、
単なるブームやノスタルジーでは片付けられないと思う。
松山市紅葉町3-47
☎:089-931-8265
休:水・木曜
営:11:00~15:00、18:00~21:30
駐車場:あり
MORE MUSIC
1983年、松山市駅から済美高へ抜ける道沿いに、開店当時のモアはあった。
たぶんタウン情報まつやまで知って、通うようになったのだと思う。
ぼくは当時14歳で、坊主頭の中学生。
それまで雑誌の記事でしか見たことがなかった輸入盤や
インディーズ・レーベルのレコードが棚に並んでるのがうれしくて、
お金も無いのによく遊びに行った。
お店の真裏を郊外電車が走っていて、通るたびにゴトゴト鳴るのも好きだった。
松山市大手町1-9-10
☎:089-932-3344
休:水・木曜
営:11:00~19:00
駐車場:なし
Instagram:https://www.instagram.com/moremusic_japan/
EKINONEKI
海運会社が所有していた歴史あるビルをリノベーションしたEKINONEKI。
カフェ、コワーキングスペース、ギャラリーとして利用されている。
合併した頃、まだ東京にいたぼくは、北条が松山市になったという事実に
今でもうまく馴染めないが、
良くも悪くも新陳代謝の激しい時の流れの中で
タフに生き延びてきた街=北条が、
旅行者や移住者たちに注目されているのは納得だ。
松山市土手内12-1
☎:080-5303-1022
休:月曜
営:10:00~17:00
駐車場:あり
Instagram:https://www.instagram.com/ekinoneki/
菅井内科
設計は長谷川逸子によるポストモダン建築で、1986年竣工。県内ではミウラートヴィレッジ、
ひだまりこどもクリニック(旧・徳丸小児科)も手掛ける。
環境との調和や光の使い方、有機的なデザインに定評がある。
松山市1番町3丁目3-3
☎:089-931-3161
休:土・日曜
営:9:00~13:00、15:30~18:30
駐車場:あり
HP:https://www.sugai-clinic.or.jp/
愛媛県県民文化会館
1986年にケンブンは誕生した。まだ道後公園に動物園があった頃の話だ。
設計者の丹下健三といえば、ぼくの中では堀之内にあった愛媛県民館(1953年)が懐かしい。
珍しい丸いドーム型の屋根を持つ、コンクリート打ちっぱなしの県民館に比べ、
80年代ならではのダイナミックな設計思想が反映されたケンブンのスケール感と壮麗さには
圧倒されたことを鮮烈に覚えている。
この時代の建築は、モダニズムの洗練とポストモダンの大胆さが交錯する時期でもあり、
ケンブンもまた、その潮流の中で生まれた象徴的な存在だった。
こけら落としで開催された坂本龍一のコンサートを、最前列で見たことも、
80年代の空気を象徴する出来事として、今となっては良い思い出だ。
松山市道後町2丁目5-1
☎:089-923-5111
休:月曜
営:9:00~22:00
駐車場:あり
HP:https://www.kenbun.jp/
マチボンJOURNAL VOL.09特集『BacktoTHE80’s』
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