愛媛で民藝に触れる旅_前編 - マチボン

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2023.10.11

愛媛で民藝に触れる旅_前編[writer]rika

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愛媛で民藝に触れる旅_前編

2000年前後から続く民藝、クラフトブーム

昨年、民藝の可能性を見つめなおした東京国立近代美術館の「民藝の100年」をはじめ、大阪中之島美術館での民藝展、「柚木沙弥郎と仲間たち」展など、様々な展覧会が催され静かな盛り上がりを見せている。
おっ、振り返ってみると愛媛にも様々な民藝の面影が残っているじゃないかー。
女化の秋、少しメローな気分で民藝に触れる旅へ。ボン・ヴォヤージュ!

 

「民藝」とは何か

「民藝」と聞くと、60年代から70年代にかけて流行した民芸調のお土産品を思い浮かべていませんか? 本来の民藝とは、プロダクトデザインで人気の柳宗理の父、柳宗悦や濱田庄司らによって提唱された造語であり、職人の手から生み出された日常の生活道具を「民藝(民衆的工芸)」と名付け、そこに美を見出そうとする生活文化運動です。ローカル感を演出した商業主義的なものとは真逆の、ラジカルな運動だったのではないでしょうか。

 

四国で唯一の民藝館を訪ねて

西条市の中心地、日陣屋跡のお堀に囲まれた一面に建つ土蔵造りの窓や屋根のアールが特徴的な不思議な建物が愛媛民藝館。この建物は建築家、浦辺鎮太郎氏が手掛けたモダニズム建築で、当時の日本民協会会長・倉敷レイヨン(現:クラレ)社長大原総一郎氏の呼びかけで設立された四国で唯一の民藝館だ。ちなみに同じエリアにある西条栄光教会、牧師館、幼稚園囲舎も同じく浦辺領太郎氏の設計で、2021年に登録有形文化財に登録されている。

 

愛媛民芸館

倉敷アイビースクエア、倉敷市庁舎などを手掛けた浦辺鎮太郎(1909-1991)が1951年に設計した、渡り廊下でつながれた三つの建物が佇む。民藝運動家の外村吉之介にも意見を仰いだとも言われる、純白の漆喰壁に木煉瓦の床とモダンかつ柔らかい空気感の教会と、吹き抜けの玄関や格子や障子、部屋ごとに段差を付けた2階など、時間による光の陰影、角度によって複雑な表情を持つ牧師館と、園庭から見ると開口部と円柱、高窓が連続するモダニズムの色濃い幼稚園舎。それぞれ個性の違う三つの建築物は、年を追うごとに価値が見直されている。

 

西条栄光教会 牧師館

 

西条栄光幼稚園

 

西条栄光教会 礼拝堂

 

エントランスを隔てて右側の民藝館入り口を入ると、100歳を超えて今なお現役染色家である柚木沙弥郎氏の手による「民藝館」の題字に迎えられる。吹き抜けには開館当時のスタッフたちによる手作りの民藝地図が掲げらていれる。アールを多用し、コンクリートにざらつきを加えたあえてシャープではない、質感や重厚感にこだわった空間。窓の格子のちょっとした造形などに建築家のこだわりが感じられる。

スタッフの矢野さんは、「各地域で作られた暮らしの道具に目を向け、美は春らしのなかにあると提唱したのが民熟です。その背景には、急速な近代化により失われていく各地の伝統文化や手仕事を案じる想いがありました。古くても価値のあるものや地域の特性を残すこと、民への普遍的なデザイン、環境への配慮など、今の若い方がモノづくりの背景にも目を向け、本来の柳たちが提唱していた民藝が受け入れられているのは嬉しいですね。地に足がついている印象です」と語る。

 

Information

愛媛民藝館
西条市明屋敷238-8

営業時間:9:00~17:00(入館受付16:30まで)
休:月曜、祝日の翌日、年末年始

Instagram:愛媛民藝館

 

民藝の旅は後編に続く…

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